Room ~ルーム~

Room

監督: Lenny Abrahamson

出演: Brie Larson, Jacob Tremblay, Sean Bridgers, Joan Allen, William H. Macy

あらすじ: 5歳の男の子、Jackはママと一緒に"部屋"で暮らしていた。"部屋"には台所、風呂、衣装ダンス、ベッド、テレビがあった。ただ、"部屋"の入り口は閉じられていた。この"部屋”の中にあるものがJackの知っている全てだった。こんな狭い空間の中で、ママはJackが肉体的にも精神的にも健康でいられるように最善を尽くしていた。Jackはママ以外の人間を一人だけ知っていた。それはOld Nickである。Old NickはJackが衣装ダンスの中で寝ているときに"部屋"にやってきて、食料と日用品を渡してくれる。7年前、Old Nickは19歳のJoy Newsomeに迷子になってしまった犬の捜索を手伝ってくれないかと頼み、隙をついてJoyを自宅の裏庭の"部屋"に監禁した。それから2年後、妊娠してしまったJoy(ママ)はJackを出産したのだった。



アカデミー賞作品賞にノミネートされ、Joy役を演じたBrie Larsonがアカデミー賞主演女囚賞を受賞した作品、"Room"を見てきました。

19歳の時に男に誘拐され、7年間もの間に"部屋"に閉じ込められていたJoyと、そこで生まれたJackの話です。しかし、"部屋"での生活から抜け出すまでよりも、そこから抜け出してから2人に起こる出来事によりフォーカスされています。なので、サスペンスと言うよりも社会派ドラマのような雰囲気がありました。スリルやドキドキより、登場人物の感情の変化や社会の不条理など、自分の想像していたものと違ったのでとても驚きました。

JoyはJackに、"部屋"が世界の全てと教えて育てました。クローゼットや椅子は本物だけど、テレビの中の人たちはニセモノ、そうしてジャックの世界を"部屋"の中だけにしたのです。しかし5歳になったJackに、Joyは"部屋"にいる本当の理由と、外の世界の存在を教えるのです。外の世界を知らないJackは戸惑いますが、次第にJoyの話に耳を傾け始め、2人で"部屋"からの脱出を計画します。"部屋"とJoyの存在だけが世界の存在だけが世界の全てだったのに、本当は外に大きな世界が広がっていたと知った時、そしてそれを実際に見た時のJackの感情は、驚きと不安に溢れていました。地球や宇宙が世界の全てじゃなくて、宇宙の外にはまた違う世界があるって知ったら?そんなこと想像もできないんですが、幼いJackにとってはそれくらいの驚きだったのでしょう。

そして映画の中では、ほとんどがJack視点で物語が進んでいきます。小さいJackの視点から見た世界や、狭い"部屋"から出て遠くのものが見えないJackの目で見たぼやけた世界、すべてが忠実に表現されています。大人の視点とはまた違った、子供のJackだからこそ感じることのできる視点、これもこの映画のひとつの魅力です。"部屋"から出たJackは、自由や喜びの感情よりも恐怖や不安といった感情が先行し、Joy以外の人とは目を合わせるのも嫌がります。広い外の世界というのは"部屋"しか知らないJackにとっては、怖い世界だったのです。そこから外の世界に順応しようと頑張るJackの姿は、女性や母親だったらきっと心に響くものがあるでしょう。

そして時々、Jackは"部屋での生活が恋しい"と言います。周囲の大人たちは驚きますが、これこそ子供のJackならではの視点をすべて表現する一言だと感じました。Jackにとって"部屋"は世界のすべてで不自由なことはなかったのですから、"ずっとママを独り占めできた部屋に戻りたい"と思うのは、子供なら普通のことです。しかしJoyを含めた周りの大人たちは、そんなことを言うJackに怪訝な目を向けるのです。そのような子供と大人の考え方や感じ方の違いも興味深い点だと言えます。



私が最も心に残っているのは、"部屋"から脱出した後の母親のJoyです。外の世界に戻ってきたJoyを待ち受けていたのは、メディアの注目と母親としての悩みでした。取材を受けた時にジャーナリストに言われた一言で心を病んでしまったJoyは、自分とJackが一緒にいることがJackにとっていいことなのか、これからJackをどうしたらいいか、悩み始めてしまいます。Joyの悩みは、きっと子供のいる女性だったら共感できるものなんだと思います。(私はいないから、そんなに悩まなくても大丈夫よって思っちゃったけど、実際に子供がいるといないじゃ悩みに対する重みが違うんだなーと。) そこからJoyがどうやって立ち直っていくのか、Jackとの関係をどうしていくのか、これが映画後半の見どころのひとつになっています。

この物語の原作は、Emma Donoghueの同名小説です。その原案となったのが、女性が父親によって24年間も地下室に監禁され、監禁中に父親の子どもを7人も出産していたという世界を恐怖に陥れたフリッツル事件と言われています。この映画の中の出来事は世界中で実際に起こった出来事であり、決してフィクションではないのです。そのことも考えながら映画を見ると、また違った見方ができるのではないでしょうか。




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